文教都市・国立を例に学ぶ「住む街の選び方」
話題の不動産プロ集団“全宅ツイ”による不動産コラム⑩
【3)道路】
宅地の価値は【前面道路の種別・幅員・舗装状況、道路接面の長さ】で決まるというのがわたしの持論です。国立の場合は【大学通り、富士見通り、旭通り、学園通り】といった広い通りを除けば、基本的には市道は幅員5.45m、一方通行に統一されています。
また、土地の区画も堤康次郎時代の整然とした宅地割も相まって(当時は70-100坪の区画割だったので、一部細分化はしていますが)道も区画も広くゆったりとした住宅街となっています。
道路の整備も行き届いており、他市と走り比べると驚きます。地味に聞こえるかもしれませんが、こういった部分に安心を感じる方は多いのではないでしょうか。
また、駅前ロータリーと一方通行によって、車の場合は家までのルートがほぼ固定されてしまう、つまり正解が一つしかないというのも、明確な解答を求める大学教授や教員に好まれる所以かもしれません。
【4)交通利便性】
「国立」から中央線で「新宿」まで33分。「国分寺」で中央特快に乗り換えればもう少し早く着きます。この時間を「遠い・長い」と感じるか「意外と近い・短い」と感じるかも人によってだいぶ違うはずです。
ちなみに、中央高速の国立インターも割と近いため、休日の車でのお出かけもスムーズです。都心から帰ってくるときは「右に見える競馬場~左はビール工場」(©荒井由実「中央フリーウェイ」)と歌いながら帰りましょう(笑)。
【5)環境】
戦後、米軍立川基地の影響で国立にもホテルや旅館の建設が進んだため、閑静な住宅街を守ろうと住民たちが文教地区指定を求める運動を起こし、学園都市エリア全域が文教地区に指定されました。
そのため、駅周辺にパチンコ店もホテルも風俗店もない、安心して子育てできる街になっています。学生もいますが、割合みんなお行儀が良く「賑やかすぎる」という印象はありません(国立の学生の特徴としては「すた丼」を頻繁に食べるくらいでしょうか)。
ファミリーには心地よい環境である反面、単身社会人男性には刺激の足りない街とも言えるでしょう。
明確な街づくりをしていくことでミスマッチを防ぐ、これも大事なことです。遊びに行くなら立川まで出ればいいのです。
遊びと住む場所の分離(よその女を家庭に持ちこまない・笑)、大事なことですね。
【6)理念・求める住民像】
さて、国立の魅力を語っていくことで、国立の住民に共有されている理念やありかたがなんとなく見えてきたのではないでしょうか。
元々が大学都市として成立し、予定調和の街の青写真があり、それが妨げられるようなことがあれば(国立マンションや駅舎の撤去)、住民たちの力で取り戻すという主体的な近代的市民の姿です。
整然とした街には整然とした人が住みます。ゴミ屋敷があっても近隣住民の通報で自浄作用が働いていきます。文教地区指定によっていかがわしいものは排除し、正しい環境で正しい子育てをしていく、そういう人物像が浮かび上がってはこないでしょうか。
わたしには「目指せ一橋大学!」というような、子供の教育に力を入れるファミリーの姿が見える街が国立なのです。
どうですか?
「街選び」の候補地に「国立」が入ってきた方はいらっしゃいませんか。
というわけで、今回は「国立」を例にとってお話をしましたが、皆様が「街選び」をするときもこのように、要素ごとに深堀していくことをお薦めします。
家族それぞれ(だいたい奥様の意見で決まると思いますが…)の優先順位を考慮していって、最後に、既にそこに住んでいる人たちのパーソナリティを把握する。そして「うまくやっていけそうか」「アナフィラキシーショックを起こさないか」などを考えて、結論が出せれば一番いいですよね。
伝統主義者が新興住宅地に住んだり、一代記の人物が地区協定の厳しい高級住宅地に住むようなミスマッチが起こると想像以上に大変です。
「街に住む」ということは、その街に住む人たちの価値観を共有するという一面を併せ持つため、そこが相反するようだといちいち摩擦が起こってお互いすり減ってしまうかもしれません。
お読みいただきありがとうございました。
本記事が、これから家探し(街選び)する人の一助となれば、これ以上の喜びはありません。
「クソ物件オブザイヤー」エントリー作品のPM経験を持つ、仲介業も大家業もブログ業もこなす不動産マルチメディアクリエイター。
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